対話は農業の展開力を育む
1.農業を取り巻く対話が注目される
いま、農業を取り巻く人と人の対話が注目されています。それは農業を支える人々の結び付きを、新たな課題のもとに再構築し、時代の要請に果敢に応える農業のスタイルを作り出すための、原動力となっているからです。
例えば、中山間地域等での集落営農の形成をめぐっては、集落内の各農家が意見を出し合い、農地の利用調整や遊休農地の発生防止への方向付けを行っています。一方で、都市地域では、直売・体験農園等を通じた生産者と消費者の日々の対話が、都市空間に存在する農業や農地の多面的価値を一層高めることになっています。
GAP(農業生産工程管理)認証を取得する場合も、作業の効率化・安全対策の設計を進めるためには、現場で従事する人々の対話を踏まえた具体策の提案から始まると思います。
2.家族内の話し合い(対話)を促す家族経営協定
上記記事のように、対話は農業の展開力を育む有効な媒体となっています。そこで、日本農業の大宗を占めてきた家族農業経営では、経営内の各人のモチベーションを高め、経営管理の充実や目標の明確化、経営の永続性の確保等に向けた道筋を明らかにして行く上で、家族内の対話を出発点とし、かつその継続を前提に行う、家族経営協定に注目してはいかがでしょうか。①家族内の話し合い(対話)と②それに基づく具体的な行動、さらに③その延長線上にある文書協定の締結といった、この一連の取り組みを家族経営協定と位置付けています。これを図1の通り示します。
もちろん③の文書協定締結後に取り組みを進める中で、必要に応じて協定内容の見直しやグレードアップを行うことも大切です。変更がない場合も、定期的に協定内容を当事者間で確認し合うことをお勧めします。
こうした家族経営協定に取り組む際の根本的な考え方は、極めて大事なことですから、「もっと詳しくその1- 家族経営協定は話し合いを促す手段 -」の別項を立てて、一層掘り下げて行きます。